研究概要 |
1.肺サーファクタントの活性に必要な蛋白質の種類と量の検索 ブタ肺サーファクタントから分離した脂質分画とアポ蛋白‐Bおよび‐C分画(SP‐BおよびSP‐C)を種々の割合で再混合し、ウサギ未熟胎仔に投与して活性を検索した。その結果、SP‐BとSP‐Cのどちらか一方が欠如しても、サーファクタントとしての機能を示さないことが判明した。SP‐BとSP‐Cの比率を1:2とし、脂質に対して2.1%のアポ蛋白(天然の2倍量)を加えると、静的肺圧量曲線は天然のサーファクタント投与した場合と同程度に好転した。しかし、20cmH_2Oの吸入圧で人工呼吸した場合の換気量は、天然サーファクタントの場合の58%にとどまった(p<0.05)。以上より、SP‐BとSP‐Cは、サーファクタントの活性に不可欠な成分であると結論された。しかし、換気量が不十分であったことから、各組成の再検討が必要であると考えられた。また、静的肺圧量曲線は、サーファクタントの機能を正確に反映しないことが判明した。以上の結果は、人工サーファクタントを開発するための重要な資料であると考えられた(J.Appl.Physiol.投稿中)。 2.成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に対するサーファクタント投与方法の検討 我々は、平成5年度のラットを用いた実験で、サーファクタントを経気道的に注入すると、ARDS様の病態が改善することを見出している。平成6年度は、噴霧吸入によるサーファクタント投与法の効果を調査た。ARDSのラットに超音波ネプライザーでサーファクタントを120分間吸入さた結果、50mg/kg前後のサーファクタントが肺胞に到達し、動脈血酸素分圧が8mmHgから243mmHgに改善した(P<0,05)。以上より、本法は臨床応用が可能であり、人工サーファクタントの開発を急ぐ必要がると考えられた(Critical Care Medicine投稿中)。
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