研究概要 |
1)新たに作成したサブスタンスP(SP)のペプチド内部に親和性を示す家兎抗血清の特異性に関する検討に際して、SPと構造類似のタヒキニン類、ならびに、SPのフラグメント類,さらに、COOH-末端延長SP前駆体との交叉反応性の検討を施工した。その結果、SPのアミノ酸中間部位(SP_<4-10>)を高い親和性で認識し得る抗体であることが判明した。なお、この抗体は、種々のSP_<4-10>シークエンスを持つSP誘導体に結合するが、SP分子の遊離のNH2-末端に対する選択性を書くことが確認され、SP中間部位指向性抗体である結果が得られた。 そこで、この抗血清と従来のCOOH-末端指向性の抗SP家兎血清とを組み合わせ、ラットの神経組織に於ける成熟型と未熟型のSP(SP前駆体)の細胞内プールの比較定量を施工した。具体的には、ラットの後根神経節(DRG)に於けるSPとその非アミド化学前駆体の分子存在比率に相応する免疫活性(RIA)を、DRGの酢酸抽出物のHPLC分画分取フラクションを用いて求めた。その際、前駆体の分子種の同定は、合成標準物質のHPLC上の溶出位置(retention time)から推定した。即ち、SP-グリシン-リジン-アルギニン(SP-G-K-R),SP-グリシン-リジン(SP-G-K),SP-グリシン(SP-G),及び、SPのRIA値は、各々、回収された総免疫活性の2.5%,1.0%,5.7%,及び86.6%に相応していた。この様にして、非アミド化学前駆体は、定常状態下に於けるSP生合成過程の中間代謝産物を成す可能性が示唆された。また、SP-Gの比較的高いレベルで検出される結果は、ラットDRGの神経細胞のSP発現に於ける末端アミド化反応が制限段階であることを示唆していた。
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