Tangsten dietによりラットの肺のキサンチンオキシダゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼを5%以下に枯渇させた。このキサンチンオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼを枯渇させたラットより摘出した灌流肺標本を用いた実験では、90分虚血-再灌流による肺障害は有意に抑制され、キサンチン-キサンチンキシダーゼ系が関与していることが明らかにされた。また、正常ラットの摘出肺標本を用いて90分の虚血-再灌流を行い、活性酸素のスカベンジャーであるSODおよびカタラーゼの効果を調べた。肺動脈圧は、SOD群、catalase群では、再灌流10、20分においてコントロール群よりも有意(p<0.05)に高かったが、肺重量は、コントロール群では、再灌流後進行性に増加したのに対し、SOD群、catalase群では増加は有意に抑制された。実験終了後に測定したwet/dry weight ratio はSOD群とcatalase群がコントロール群に比べ有意に小さく、SOD、catalaseにより肺障害は軽減された。したがって、肺の虚血再灌流障害において活性酸素の関与が示された。一方、虚血+純窒素換気ではキサンチンデヒドロゲナーゼからキサンチンオキシダーゼへの変換および細胞内でのヒポキサンチンの蓄積が促進され、再灌流時の障害が大きくなるとの予想に反して、換気せずに放置した場合よりも障害が少なかったことから、肺における虚血-再灌流障害におけるキサンチン-キサンチンオキシダーゼ系からの活性酸素の発生の関与は考えにくい。以上の結果より、キサンチンオキシダーゼ自体が活性酸素の発生とは独立の何らかのメカニズムを介して肺の虚血再灌流障害に関与している可能性がある。このことは、アロプリノールが活性酸素の発生の抑制とは関係なく肺保護作用を有することとも一致した。
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