I.吸入麻酔薬のMACに対する重水の影響。 慢性投与実験:50%重水を含んだ水を2週間与えた後、Tail Clamp法にて吸入麻酔薬(イソフルレン)のMACを測定した。投与群のMACは1.23%で対照群(1.30%)に比べ軽度低下した。 急性投与実験:重水投与群には5mlの生理食塩重水を、対照群には同僚の生理食塩水を腹腔内投与し、2時間後に慢性投与実験と同様のイソフルレンのMACを測定した。対照群(1.13%)に比べ投与群(1.03%)で軽度低下した。 以上より、重水が吸入麻酔薬の作用に対して相加的に作用することがわかった。 II.重水の麻酔作用・鎮痛作用 重水の麻酔作用:生理食塩重水をマウス腹腔内投与したとき、麻酔類似作用が観察された。すなわち投与約3後から、外界からの刺激に対する反応が低下し、吸入麻酔導入時に観察される後弓反張が観察された。その後Righting Reflexが約10分間消失した後、徐々に回復し2時間後には外見上対照群と差がなくなった。 重水の鎮痛作用:熱刺激疼痛計を用いて重水投与後マウスが疼痛刺激に反応するまでの時間を経時的・定量的に測定した。ただし22.8秒以内に反応しなかった場合は無反応とした。生理食塩重水2ml投与群では、投与後反応時間の延長が見られ、5ないし10分で67%が無反応となった。5ml投与群では5なし15分で全例無反応となった。その後徐々に回復し、投与2時間後には反応時間は投与前値に回復した。 以上より重水に麻酔作用及び鎮痛作用があることがわかった。 III.重水-アルコール混合系に於ける水和水の動的構造 重水-アルコール混合系においてNMRを用いて^2Dと^<17>Oのスピン-格子緩和時間を測定し、麻酔作用の強さと水和水の配位数および運動性が相関することがわかった。
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