低酸素により誘発させた肺高血圧に対する一酸化窒素(NO)吸入の効果を、家兎の潅流肺標本を用いて検討した。摘出肺を定流量の血液加潅流液で潅流し、肺は人工呼吸器によりNormoxic gas(N)あるいはHypoxic gas(H)で換気した。H-gas換気よる肺動脈圧の上昇(HPV)は約5.2mmHgであるが、吸入気ガスに40ppmのNOガスを加えると、HPVは完全に抑制された。そこで吸入NO濃度とHPV反応の間の用量-反応関係を求めると、EC_<50>=15.0ppmであった。肺血管内皮細胞のEDRF(endogenous NO)産生を抑制するとされる酵素L-NAMEで前処置するとHPV反応は10.1mmHgと増強するが、用量-反応関係には無処置群との間に差を認めなかった。以上の実験結果から吸入NOは用量依存性にHPVを抑制し、この作用は内因性NOの産生が阻害されても影響を受けないことが示唆された。 さらに同様の家兎摘出潅流肺で、肺重量の変化を肺血管傷害の指標とする標本を用いてエンドトキシン処置による肺傷害に対するNO吸入効果について検討中である。 次に犬のin vivo標本で、低酸素ガス換気およびオレイン酸肺血管傷害による肺高血圧に対するNOガス吸入の影響を肺循環と体循環を同時に観察しながら検討した。この結果は実験を継続中であるが、吸入NOはオレイン酸による肺高血圧に対して選択的に拡張作用を発現し同時に肺ガス交換能を改善する印象が得られている。
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