研究概要 |
低酸素により誘発された肺高血圧に対する一酸化窒素(NO)吸入の効果を,家兎の潅流肺標本を用いて検討した。昨年度の正常肺、および内因性NOの産生を阻害した標本に引き続き、メチレンブルー(MB)によりNOの信号伝達系、guanylate cyclase(GC)を阻害した標本により検討を行った。その結果MB処置により肺血管トーヌスが高まり低酸素性肺血管反応(HPV)は増大するが、basal pressureに対するHPVの比率は変化しなかった。この条件下で吸入NOによるHPV抑制作用は、NO信号伝達系が阻害されているにも関わらず、完全には阻害されなかった。この結果は血管内皮細胞、さらには血管平滑筋細胞傷害が認められる場合にも、吸入NOの効果が期待できることを示唆するものである。 次に雑種成犬のオレイン酸肺傷害標本における肺高血圧に対する吸入NOの作用を検討した結果、5-20ppmのNO吸入が肺傷害時の肺高血圧を約50%抑制するが、ガス交換能は改善しないことを示した。このin vivoの実験結果は上記の知見を裏付けるものである。 さらに家兎摘出肺潅流標本で毛細管濾過係数を測定する標本を作製し、エンドトキシン傷害肺での吸入NOの作用を検討中である。標本作製過程で技術的問題が生じたため実験の進行が遅れたが、現在対照値の測定を終了し、エンドトキシン処置肺での検討に入ったところである。今後さらに研究費の援助を受けて、研究が進展することを期待している。
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