ハロセン麻酔下に下部胸椎から腰椎にかけて椎弓切除を行い、硬膜外より微小電極を挿入し、単一の脊髄後角細胞活動電位の導出を行った。非侵害刺激および熱、ピンチによる侵害刺激に対する反応からwide dynamic range neuronの同定を試みているが、特に内臓痛にも反応を示す細胞はきわめて少なく、現在十分な細胞数が得られていない。同定された細胞にモルヒネのクモ膜下腔投与を行ったところ、侵害刺激に対する細胞活動発射が容量依存性に抑制されることが示唆されたが結論できるまでには至っていない。モルヒネとリドカインの同時投与に対する結果は未だ得られていない。一方、脊髄レベルにおけるモルヒネ、リドカインの体性痛および内臓痛に対する相互作用を機能的に検討した。体性痛刺激としてはtail flick testを、内臓痛刺激としては colorectal distension testを用いた。単独では抗侵害効果がほとんど見られないモルヒネ、リドカインの少量の混合投与により、体性痛および内臓痛に対する著明な抗侵害効果が認められた。モルヒネとリドカインの相互作用はisobolographic analisisおよびpotency ratioを用いて検討した結果、相乗作用であることが証明された。さらにモルヒネ、リドカインまたは両者の混合液のクモ膜下腔持続注入を行い、同様に抗侵害効果を検討した。モルヒネとリドカインの著明な抗侵害効果の増強は主に脊髄における両者の相乗作用に起因することが明らかになった。
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