研究概要 |
ラット心筋アドレナリンβ受容体とその共役系を含む膜画分を用いてラジオアイソトープ(R1)を用いた受容体結合実験とエンザクムイムノアッセイによるcyclic AMP産生量を測定し,揮発性吸入麻酔薬(ハロタン及びセボフルラン)の影響を検討し以下の結果を得た。 (1)0-2.0mMのセボフルラン存在下でKd,Kiは濃度依存性に増加したが,Bmax(受容体数の指標)は変化しなかった。 又,Munson 5の式を用いて解析した高親和状態の受容体の割合いは2.0mMのセボフルラン存在下で有意に低下した。 ハロタンも同様の影響を示した。 (2)C-AMP産生速度はAC刺激時には0-2.0mMセボフルランの影響をうけなかった。 2.0mMセボフルラン存在下でβ-AR刺激時には有意に低下し,GS刺激時にも同様に有意な低下をみた。 これらの有意な低下はハロタンでセボフルランよりも強力な低下をみた。 この研究により,セボフルランはリガンド-受容体の結合を抑制し,受容体と促進性GTP結合蛋白の関係を阻害することで,アドレナリン-β受容体の情報電伝を抑制することが示された。 さらに,ハロタンのこれらの抑制作用はセボフルランよりも強力であることが明らかとなり,臨床上ハロタン麻酔の方がセボフルラン麻酔よりも血圧低下が強いことの科学的裏づけとなる機序を示すことにつながった。
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