研究概要 |
体重9〜10kgの雑種成犬を対象とし,チアミラール20mg・kg^<-1>静脈内投与後,気管内挿管,第6肋間で開胸し左冠動脈回旋枝(CX)に電磁血流計プローブとネジ式コンストリクターを装着した。また左前下降枝(LAD)から24Gのコントラスト剤注入用のカテーテルを左冠動脈本幹に挿入固定した。心表面より5MHzの超音波トランスデューサーで乳頭筋レベルの左室短軸像を描出,S&W社VC-50を用いて30秒間超音波攪拌を行った5%アルブミン2mlを左冠動脈内に注入しその造影過程をS-VHSビデオレコーダにて記録した((1))。CX血流量を50%減少させ測定((2)),続いてセボフルレン(SEV)1MACを吸入し安定20分後に測定し((3)),フェニレフリン(PHE)を持続点滴し血圧を(2)と同程度に回復させ再度側定を行った((4))。造影過程はビデオボードからコンピュータに入力し,640×480pixelsの256階調のgray levelに定量化,CX潅流域とLAD潅流域にそれぞれ関心領域を設定した。測定項目はコントラスト剤注入前の値で補正したpeak gray level,コントラスト剤注入からpeakに達するまでの時間(TTP),peakからの半減時間(T1/2)である。 CX領域のpeak gray levelは狭窄により低下し,,SEV吸入・PHE投与により上昇傾向を示した((1)58.1±15.3(2)39.5±16.7(3)47.5±14.5(4)51.0±7.6)。しかしCX領域とLAD領域のpeak gray levelの比は狭窄により低下し,SEV吸入・PHE投与により変化しなかった((1)0.84±0.24(2)0.68±0.18(3)0.67±0.25(4)0.61±0.17)。CX領域のTTPおよびT1/2はばらつきが大きく,LAD領域との比をとっても一定の傾向を示さなかった。 以上より現時点ではSEVは冠狭窄心においてintercoronry stealを引き起こす明らかな傾向を示さなかった。しかしまだ対象数が少なく今年度の臨床でのデータと併せてさらに検討する必要があると思われる。
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