研究概要 |
(平成5年度動物実験) 雑種成犬9頭を対象とした左冠動脈回旋枝(CX)に電磁血流計プローブとコンストリクターを装置、またカテーテルを左冠動脈本幹内に挿入固定した。心表面より心エコーで乳頭筋レベルの左室短軸像を描出、超音波撹拌を行った5%アルブミン2mlを左冠動脈内に注入しその造影過程をビデオレコーダにて記録、コンピュータに入力し定量化した。測定項目はコントラスト剤注入前の値で補正したpeak gray level,コントラスト剤注入からpeakに達するまでの時間(TTP),peakからの半減時間(T1/2)で,関心領域をCXと左前下行枝(LAD)領域の内層及び外層に設定した。CX領域のpeak gray levelは狭窄により低下し内層・外層比(I/O)及びLADとの比(CX/LAD)は有意に低下した。セボフルレン(Sev)1MAC吸入によりI/Oは改善したがCX/LADは有意に低下したままだった。フェニレフリン投与により血圧を上昇させるとCX回復した。TTP及びT1/2はLAD領域との比をとっても有意な変化を示さなかった。 (平成6年度臨床研究) 冠動脈バイパス術患者9名を対象とし気管内挿管後、経食道心エコープローブを挿入した。部分体外循環開始後コントラスト剤5mlを大動脈起始部に注入、最も狭窄度の高い罹患枝灌流域の内外層に関心領域を設定し同様の解析を行った。動脈圧をコントロール値に保ち、Sev1MAC吸入するとpeak gray levelは変化せず、I/Oも低下しなかった。またT1/2も有意な変化を示さなかった。TTPはSev吸入により両領域とも延長する傾向を示した。Sev吸入により新たな局所壁運動異常を示した症例はなかった。 以上より動物・臨床研究ともにSevは冠狭窄心においてcoronry stealを引き起こす明らかな傾向を示さず、血圧低下など循環動態の変動を伴わない場合には冠動脈疾患患者においても安全に使用できることが明らかになった。
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