研究概要 |
我々はナトリウムチャンネル遮断薬であるリドカインをスナネズミの脳室内に投与することにより海馬CA1領域での遅発性神経細胞壊死が改善されることを平成5年度研究実績で報告している。本研究では,リドカインが一過性虚血時の細胞外アミノ酸濃度に及ぼす影響を脳内微量透析法で検討した。 ハロセン麻酔下にスナネズミの海馬CA1野に微量透析プローブを挿入し,毎分2ulの速度でリンゲル液を灌流した。脳温および直腸温を37〜38℃に保ち,灌流開始2時間後に4分間の一過性前脳虚血を惹起した。灌流液を4分毎に回収し,グルタミン酸,アスパルギン酸,グリシン,タウリン,GABAをオルトフタルアルデヒド誘導体化HPLC法で測定した。リドカイン灌流群は灌流液中にリドカイン4mMを加えた。 対照群では一過性前脳虚血によってアスパルギン酸,グルタミン酸,グリシン,タウリンはそれぞれ虚血前値の760%,1070%,190%,1210%にまで増加した。しかし,リドカイン4mMを灌流液中に加えると最大値は対照群の最大値と比べてそれぞれ67%,79%,58%,59%減少した。リドカイン灌流群では対照群に比べて細胞外アミノ酸の増加開始が数分間遅れる傾向を示した。これらの結果から,リドカインは細胞外アミノ酸濃度,特に虚血性神経細胞障害に影響を及ぼすと言われている興奮性アミノ酸濃度の初期の増加を抑制することにより,神経細胞障害に対して保護効果を示すことが示唆される。
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