研究概要 |
心室と血管系の相互関係の解析を心室の最大エラスタンス(Ees)と血管の実効エラスタンス(Ea)の比を用いて検討した。ハロセン1MAC,2MACはEesをそれぞれ30.6%,60.5%減少させた。イソフルレン1MAC,2MACはEesをそれぞれ20.4%,44.4%減少させた。Eaはハロセン1MAC,2MACでそれぞれ19.6%,40.3%減少し、イソフルレン1MAC,2MACでそれぞれ25.4%,40.5%減少した。イソフルレン麻酔下ではEa/Eesは変化しなかったが、ハロセン麻酔下では2MACでイソフルレンに比べて有意にEa/Eesが増加した。以上の結果よりハロセン、イソフルレンともに心収縮性を低下させるとともに血管拡張作用による後負荷軽減作用を持つものことが示唆された。Ea/Eesがイソフルレンで変化しなかったことより、心室の収縮性に対する抑制と血管の緊張度に対する抑制がイソフルレンでは同程度に生じると考えられる。また、ハロセンでEa/Eesが増加したのは血管に対する抑制作用以上に心収縮抑制が生じたためと思われる。すなわち、イソフルレンは心室の仕事効率を維持するが、ハロセンは減少させる方向に作用することが示唆された。以上の研究成果は、平成5年日本麻酔学会、および1993年アメリカ麻酔学会で発表し、現在投稿中である。 また、同様の方法を用いてalpha作用を持つフェニレフリンと麻酔薬による循環抑制との関連を検討した結果、フェニレフリンはハロセンによる心抑制を改善する可能性があることをEa/Ees比から明かにすることができた。この研究結果は1993年アメリカ麻酔学会で発表し、現在投稿中である。
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