1.血管平滑筋収縮測定に関する実験系は、血管平滑筋微小標本(長さ0.5mm、幅0.1mm、厚さ0.02mm)を用いて、張力を測定する装置と、血管リング標本(内径0.8-1.2mm、長さ2mm)を2個セツトして張力を測定する装置を作成することにより完成させた。 2.ウサギ耳動脈、ウサギ腸間膜動脈より作成した血管平滑筋微小標本により、循環系作用薬であるドパミン・ドブタミンの血管平滑筋に対する作用を検討した。ドブタミンは臨床で使用する濃度で、強力な収縮抑制作用を両血管平滑筋に示した。ドパミンは腸間膜動脈では収縮抑制作用を示したが、耳動脈ではドパミン自体が臨床使用濃度で収縮を引き起こした。この結果は、高濃度ドパミン使用時の抹消循環不全を説明するものと考えられる。 3.ショック時の血管反応性に関した研究では、エンドトキシンショック時の循環不全の原因としての、エンドトキシンの血管平滑筋に対する作用を検討した。より臨床の条件に近付けるため、標本として胃切除術時に摘出されたヒト胃大網動脈を用い、2mmの血管リングを作成して張力を測定した。エンドトキシン投与によりノルアドレナリンによる収縮は抑制され、この抑制はNitric Oxide産生阻害剤であるメチレンブルー等により解除された。この結果から、ヒトエンドトキシンショック時の循環虚脱の原因としてのNitric Oxideを介した血管拡張作用が確認された。 4.血管内皮細胞の関与を確認するために、血管内皮細胞を機械的に除去した標本を作成し、エンドトキシンの作用を観察した。血管内皮細胞除去標本ではエンドトキシンの収縮抑制作用が減少したことから、エンドトキシンの血管拡張作用のある程度は血管内皮細胞の機能を介したものであることが確認された。 5.今後ヒト胃大網動脈を用いた実験系でエンドトキシンショック治療薬の有効性についても検討する予定である。
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