研究概要 |
種々の刺激に反応するinducible peptideであるVFGを取り上げ,侵害刺激とVGFの関係を検索した。また、侵害刺激を広義の"ストレス"の一貫としてとらえ、水浸拘束ストレスにおけるVGFの発現も検索した。坐骨神経切断6時間後及び水浸拘束ストレス負荷後6時間のラットにおいて、BGFmRNAが視床下部室傍核に誘導されることをin situ hybridizationにより検出した。長期にわたるニューロン活動の活発さを表すVGFが、視床下部下垂体系の中核細胞群である室傍核に現れることは、視床下部-下垂体を介する広範な全身的なホルモンの変動を示唆している。またこの結果は侵害刺激においても水浸拘束ストレスと同様の機序が視床下部の細胞で起こっていることを示しており、侵害刺激も他のストレスと同様の内分泌反応を引き起こすことが示唆された。 各種ストレス負荷時の動態に比べ、ストレス除去後の視床下部ホルモンの変動についての検索はほとんどなされていない。今回、長期ストレス除去後の回復を調べるため,高張食塩水負荷時の各種ペプチドの視床下部における変動を検索した。今回我々は2%食塩水を飲水として与え,1週間高張食塩水負荷した後の室傍核、視索上核における各種ペプチドホルモンの変動を免疫組織化学法にて経時的に観察した。7日間の高張食塩水負荷直後においては、バソプレッシン、ガラニン、ダイノルフィンの免疫活性は著明に減少していた。このことは、これら物質の脱水時における分泌亢進を示していると考えられる。経時的に反応後の回復を観察すると、バソプレッシン、ガラニンは、負荷除去後1週間で完全に回復していたが、ダイノルフィンは1週間の時点ではいまだ減少したままであった。これらの結果は長期ストレス負荷除去後も、脳内ホルモン、変動は長期続くものがあることを示し、臨床上も興味深い知見と言える。
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