研究概要 |
疼痛をはじめとする侵害刺戟が自律神経系及び内分泌系の最高位中枢である視床下部ホルモン分泌に及ぼす影響をバソプレッシンや、未だ侵害刺激との関係が十分解明されていない視床下部ペプチドの動態も検討し、侵害刺激に対するホルモン分泌やその制御がどのようなメカニズムでおこっているのかを解明した。具体的には、 1)侵害刺激後のimmediate early gene(IEG)及びペプチドmRNAの誘導・侵害刺激を与えた実験群を作成し、それに対する各種神経ペプチド、及びIEGの変化を視床下部、脊髄にて観察した。侵害刺激にあたっては、ホルマリン足底注入、座骨神経切断を用いた。各々の実験群にて刺激または切断後、1時間、8時間、24時間、48時間の時点で検索した。脊髄後根及び脊髄神経節では、c-fos及びc-jun mRNAは2時間後に著明に上昇していた。視床下部においては、術語48時間の時点で室傍核においてCRF,バソプレッシン、エンケファリンmRNAの上昇がin situ hybridization及び、Northern blot法にて、CRF免疫活性の上昇が免疫組織化学にて認められた。この結果侵害刺激後、視床下部の各種ペプチドが変動することが判明した。しかも、この変化は、IEGの変動後に起こっており、これらの物質を介して起こっていることが示唆された。 2)侵害刺激及び水浸拘束ストレスによる視床下部におけるVGFの誘導:座骨神経切断6時間後及び水浸拘束ストレス負荷後6時間のラットにおいて、VGFmRNAが視床下部室傍核に誘導されることをin situ hybridizationにより検出した。長期にわたるニューロン活動の活発さを表すVGFが、視床下部垂体系の中核細胞群である室傍核に現れることは、視床下部-下垂体を介する広範な全身的なホルモンの変動を示唆している。またこの結果は侵害刺激においても水浸拘束ストレスと同様の機序が視床下部の細胞で起こっていることを示しており、侵害刺激も他のストレスと同様の内分泌反応を引き起こすことが示唆された。これ以外にも 3)高張食塩水負荷及び負荷除去後の視床下部ホルモンの検索も行った。
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