全身麻酔下の犬の赤血球を99mTcでラベルしガンマカメラにて測定した腸管部の放射線強度変化により内臓血液量の推移をモニターした。同時に動脈圧、門脈圧を圧トランスデューサーにて、また門脈血流ドップラー血流計にて測定することで血管拡張薬が抵抗血管・容量血管に与える影響を同時に定量するシステムを作成した。血管拡張薬は動・静脈の両方に効果を及ぼすがそれぞれ心臓の前負荷・後負荷と言う循環制御上異なる意味を持っており両方の効果を摘出血管片でなくInVivoの状態で同時定量できることは血管拡張薬が全身循環に与える影響を正確に評価する上で重要である。このシステムにより心不全時の治療に頻用されるニトログリセリンの内臓血管床投与量-効果関係を決定しつつあり、有意の血管抵抗減少を認める最小濃度は容量増加を認める濃度の約10倍であることが認められた。さらに心臓前負荷と内臓血管容量の関係も解析中であるが、ここまでの犬の実験を通して心臓前負荷と容量血管系の拡張の動的関係を把握する上で容量血管系の機能的分画、とりわけUnstressed Volumeを測定することがきわめて重要であることが認識された。Unstressed Volumeの決定のためには循環充満圧(一時的に心停止し血液が動静脈に圧較差無く配分された際の全身血管が血液を保持するための圧)を知る必要があり犬において測定を試みたが心停止までに時間がかかり交感神経系の異常興奮が避けられないなどの技術的困難のため断念した。血管拡張薬の心臓前負荷と静脈容量血管の関係を明らかにする為の犬のシステムに代わるものとしてラットを用いて急速輸液時の循環血液量と循環充満圧を測定する新しいシステムを作成した。現在、これまであまり検討がなされていなかった静脈系のパラメーターの経時的変化を中心にして実験遂行中である。
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