前年度に行ったニトログリセリン投与時の犬血管内臓床の血液量と左心室拡張終期圧の関係を解析し、低濃度から中等度のニトログリセリン濃度では内臓血管床の血液量の増加が心前負荷の低下と強い相関を持つことが明かとなった。しかし、容量血管のみならず動脈系抵抗血管の拡張も著明になる80μg/kg/min以上の高濃度のニトログリセリン投与時では内臓血管床の血液量増加時にも心前負荷・心拍出量の増加を認めるという乖離した結果を得た。圧-容量曲線を検討したところ、これは高濃度ニトログリセリンで内臓血管床の血液の主な機能的分布がUnstressed VolumeからStressed Volumeに変化したためと考えられる。この点は、平均循環充満圧(一時的に心停止し血液が動・静脈に圧較差無く配分された際、全身血管が血液を保持するための圧)の変化としても表現できると考えられ現在Levyらのモデルに沿って解析をさらに進めると共に結果発表の準備を行っている。又、エンドトキシンショック時には血管内皮に作用する一酸化窒素(NO)の過剰により全身の血管拡張が生じることが知られており今回の高濃度ニトログリセリンの系との関連も検討中である。 一方、ラットによる新たな実験系においては右心房内バルーンカテーテルを用いた一時的心停止により平均循環充満圧を測定しながら急速輸液時の容量血管系の機能的分画変化を計測中である。解析の途中であるが、輸液後15分程度でstressed volumeからunstressed volumeへの移行が行われるようである。結果を学会などに発表する準備中であり、次段階としてこの機能的分画の移行が血管拡張薬でどの様に変化するかを引続き実験していく予定である。
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