ビーグル犬12頭を対象とし、初期張力を15gとしたin vivo等尺性気管平滑筋張力測定モデルを用い、気管平滑筋収縮物質としてセロトニン20mug/kgを中心静脈から投与した時の気管張力変化を測定した。張力変化が対照値に戻った後、ハロセン1MACを、次いで2MACを吸入させ、測定を行った。イソフルレン、セボフルレンについても同様に測定した。 セロトニン投与時の張力は、ハロセン非吸入時(0MAC)において156%の増加率であったが、ハロセン1MAC、2MAC吸入下ではそれぞれ142%、122%と増加率が減少した。この減少はすべての群間に有意差がみられた。イソフルレン0、1、2MAC吸入下ではそれぞれ162、152、133%、セボフルレン0、1、2MAC吸入下ではそれぞれ162、161、142%であり、0MACと2MAC、1MACと2MAC間に有意差がみられた。また、薬剤間ではハロセンとセボフルレンで1MAC、2MACに有意差がみられた。以上より、セロトニンによる気管張力の増加が、揮発性麻酔薬の吸入濃度を増すほど低く抑えられ、その程度はハロセンがセボフルレンに比べて大きいことがわかった。 ビーグル犬5頭に同様のモデルで、アセチルコリン0.1mug/kgを頭側甲状腺動脈より動注して張力変化を測定し、ハロセン2MAC吸入下の張力と比較した。張力の増加率はハロセンの吸入により171%から131%へと減少し、ハロセンはアセチルコリンに対しても拮抗作用を有することが確かめられた。 引き続きヒスタミン動注、および迷走神経刺激による気管張力変化に対する揮発性麻酔薬の及ぼす影響について検討中である。
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