研究概要 |
前年度は、初期張力を15gとした in vivoイヌ等尺性気管平滑筋張力測定モデルを用い、セロトニン、アセチルコリンによる張力増加が、揮発性麻酔薬により拮抗されることを明らかにした。引き続き今年度は以下の研究を行った。 ビ-グル犬5頭を対象とし、気管平滑筋収縮物質としてヒスタミン10μg/kgを頭側甲状腺動脈より直接注入した時の気管張力変化を測定した。張力が対照値に戻った後、ハロタン2MACを吸入させ、測定を行った。張力の増加率はハロタンの吸入により128%から115%へと減少し、ハロタンはヒスタミンに対しても拮抗作用を有することが確かめられた。 ビ-グル犬12頭を対象とし、頸部迷走神経電気刺激による気管張力変化を測定、張力が対照値に戻った後、各種揮発性麻酔薬をを吸入させ、測定を行った。迷走神経電気刺激により、張力は141%へと増加、ハロタン0.5MAC、1MAC、1.5MAC吸入下では、132%、127%、118%に、イソフルラン吸入下では、133%、131%、127%に、セボフルラン吸入下では、128%、122%、117%と吸入濃度を増やすほど増加の程度は少なくなった。 ビ-グル犬6頭を対象とし、純酸素吸入下,およびハロタン2MAC吸入下でのセロトニン20μg/kg投与時の張力変化を測定した。次いで,両側の迷走神経を切断後,同様の測定を行った。両側の迷走神経切断前の対照値は162%、ハロタン2MAC吸入時は135%、切断後の対照値は140%、切断後ハロタン2MAC吸入下では121%であった。迷走神経の切断前と切断後の対照値間,および2MAC間に有意差はみられなかった。 なお、ビ-グル犬3頭に、ハロタン吸入時の気管血流量をレーザー血流計を用いて測定したが、有意な変化は見られなかった。 以上から、揮発性麻酔薬は、迷走神経系を介する作用と、気管に対する直接作用の両者の機序により、気管平滑筋拡張作用を有するものと考えられた。
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