研究概要 |
我々は以前、マクロファージブロッカーとされているカラギーナンをマウス腹腔内に前処置すると、エンドトキシン(LPS)刺激後の腫瘍壊死性因子(TNF)の産生や致死率を著明に亢進させることを報告した。今回はこのモデルを用いて、最近、各分野で注目されている亜酸化窒素(NO)に焦点を当て、エンドトキシンショックにおけるNOの役割やサイトカインとの関係について検討した。その結果、カラギーナン前処置マウスでは、致死に至らないごく微量のLPS(5mug)を静注するだけで血中のNO代謝産物、NO_2^-+NO_3^-は6時間目から著増し、LPS投与12時間後まで接続した(最大値平均750muM)。すなわち、このカラギーナンモデルは、微量のLPS刺激でTNF産生だけでなくNOの産生も亢進させることが明らかとなった。また、血中のNO_2^-+NO_3^-はTNF産生量と相関があったことから、このモデルでのLPS刺激後のNO産生にTNFが関与していることが示唆された。次に、このカラギーナンモデルにおいて、NO合成阻害剤の一つ、N^<omega>-nitro-L-arginine methyl ester(NNLAME)をLPS刺激前に静注しておくと、血中のNO_2^-+NO_3^-の増加はほぼ完全に抑えられたにも関わらず、致死率は有意に亢進した。また、カラギーナン前処置ラットを用いた実験では、LPS静注後の一過性の血圧低下はNNLAMEの持続静注で有意に抑えられたが、LPS刺激6時間後の肝細胞障害(組織所見、血清OCT,m-GOT)は増悪した。以上の結果より、エンドトキシンショック時に誘導されるNOは、臓器を保護する方向に働いている可能性を持つことが示唆された。したがって、エンドトキシンショック時のNO合成阻害剤の有用性に関しては、より詳細な検討を要するものと思われる。
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