研究概要 |
1.ヒト膀胱癌組織における糖脂質発現の変化 乳頭状表在性膀胱組織には浸潤性膀胱癌組織に比べて大量のGM3が蓄積していた。ヒト膀胱癌由来株T-24,KK47に対して培養液にGM3を添加し、in vitro invasion assayを試みたところ、10-100μg/mlの範囲で濃度依存的に膀胱癌細胞の浸潤を抑制した。 2.膀胱癌組織における糖転移酵素活性。 乳頭状表在性膀胱腫瘍および非乳頭状浸潤性膀胱腫瘍組織におけるGb3,GM3,GD各格合成酵素活性を測定した。乳頭状表在性膀胱腫瘍におけるGM3の蓄積は各糖転移酵素活性の相違から説明可能であった。 3.BBN誘発ラット膀胱癌モデルにおける糖脂質発現パターンの変化。 BBN誘発ラット膀胱癌モデルを作成し、内視鏡的観察によって治療前に腫瘍量の標準化が必要なことを強調した。その発ガン過程における糖脂質発現パターンの変化についは未検討である。 4.Brefeldin A及び遺伝子導入などによる膀胱癌細胞の増殖、浸潤能抑制効果。 膀胱癌由来細胞T24,YTS-1,KK47,尿膜管腫瘍 来株YTS-3および正常膀胱粘膜由来細胞HCV-29に対して培養液中にBrefeldin Aを加え、ガングリオシド発現パターンおよび増殖能、浸潤能におよぼす影響について検討した。sialyLe^Xを発現している細胞ではBrefeldin Aの添加によってその発現が減少し、GM3の発現が増加した。また、低濃度Brefeldin Aの添加により、in vitroでの浸潤能抑制効果を認めた。 マウスMBT-2腫瘍に対するGM3局所投与の抗腫瘍効果 未分化なマウス移行上皮癌であるMBT-2皮下移植腫瘍に対して、10及び100μg/mlのGM3を腫瘍の下に局所投与したところ、浸潤抑制、増殖抑制効果を認めた。しかし、GM3合成酵素のC-DNAはいまだクローニングされておらず、遺伝子導入によって膀胱癌の糖脂質発現パターンを変化させることによる増殖能や浸潤能の抑制に関する検討は不可能であった。
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