研究概要 |
高エネルギー水中衝撃波(SW)と抗癌剤の併用による治療を兎のVX2膀胱癌、マウス膀胱癌(MBT-2)の皮下移植腫瘍に行ったところ腫瘍の縮小、消失、延命効果を認めた。また、SW照射は転移を誘発しなかった。そこで、東北大学医学部倫理委員会の承認のもとに、SWと抗癌剤の併用を臨床に応用した。 衝撃波の発生装置として、24枚の大型扇形ピエゾ素子を用い、1.3KV、2-5/shots/minで10,000-20,000発の衝撃波を照射し、同時に抗癌剤の静脈内注入を併用した。衝撃波の焦点部における最大圧力は100MPaである。 症例は粘液産生性の低分化の前立腺癌の右側腹部筋肉内転移腫瘍で抗癌剤,ホルモン療法は無効であった。この腫瘍に対してSW10,000shots+CBDCA100mg/body+THP10mg/bodyによる治療を計4回行った。 結果:Ga-enhanced MRIにて中心部に壊死を思わせる変化を認めた。さらに4回のSW照射とCBDCA100mg/body+THP10mg/bodyの静注後、右側腹部筋肉内腫瘍の摘出術を行った。腫瘍の割面はメッシュ状構造となり、組織学的には中心部はPAS染色陽性の粘液のみが残り、腫瘍細胞の消失を認めた。腫瘍の辺縁部にはvividな粘液産生性腫瘍細胞を認めた。PAS免疫染色では、腫瘍細胞も、粘液も染色されなかった。副作用としてはSW照射部に皮下出血を認めたが、SW照射を重ねるごとに皮下出血は軽減されていった。また、照射されと腫瘍部の疼痛を認めた。血液生化学検査では筋組織の破壊のためと思われるcreatine kinase(CK)の一過性の上昇を認めた。 まとめ:1.高エネルギー水中衝撃波(SW)と抗癌剤(THP+CBDCA)の併用にてホルモン抵抗性前立腺癌の転移巣に著名な壊死をもたらした。2.8か月の観察期間中他の部位への転移は認めず、SWの照射は転移を誘発しなかった。
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