研究概要 |
内分泌療法(去勢術あるいはLH-RHアナログ)による治療後、再燃し前立腺特異抗原もしくは前立腺性酸性フォスファターゼ倍加時間を算定しえたのは42例である。この中で前立腺原発巣の再発部位を生検した7例のホルマリン固定標本を用いてArgyrophilic nucleolar organizer regions(AgNOR)および増殖細胞核抗原(PCNA)染色を行った。同じく増殖能の指標とされるKi-67は新鮮材料を必要とし、今回は標本が無く検討できなかった。AgNOR染色は既に報告してある方法にておこなった(Prostate20:1-13,1992)。クラスターを形成しているものは焦点を変えることにより個々の小体を数えた。PCNA染色は、一次抗体としてDako社の抗PCNAモノクローナル抗体、二次抗体としてVector Lab.社のビオチン化抗マウスIgGを用いたABC法にておこなった。全腫瘍細胞に対する陽性細胞の割合よりPCNA陽性率(%)を算出した。腫瘍マーカー倍加時間の算定は、腫瘍マーカーの対数値をY軸、日時をX軸として、上昇直前より治療変更前までの値より、その回帰直線Y=aX+bを求め、log2/aより得た。AgNOR染色による小体数、PCNA陽性率(%)および腫瘍マーカー倍加時間はそれぞれ、4.0-4.9(4.4±0.3)、5-60%(29.4±24.4)、40.2-151日(76.9±44.8)であった。PCNA陽性率と腫瘍マーカー倍加時間とは、強い逆相関を示したが、AgNOR染色による小体数は他の2つとは相関がなかった。 以上の結果より、腫瘍マーカー倍加時間で示される前立腺癌の内分泌療法再燃後の増殖は、PCNAでみた細胞増殖能と強く関連することが示唆された。
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