研究概要 |
平成5年度の研究は、前立腺癌の内分泌療法の1つとして最近普及しつつあるLH-RHアナログ剤の特異的な副作用であるflare up現象を軽減させるための動物実験を行った。雄コペンハーゲンラットにLH-RHアナログ剤と抗アンドロゲン剤を併用投与し、投与後短期間の血中ホルモン値の変動、標的臓器の重量の変化および組織学的変化の有無を検討した。すなわちLH-RHアナログ剤としてICI118630、抗アンドロゲン剤としてTZP4238を用い、両者併用群を3群に分け、LH-RHアナログ剤投与日、第3、14、28日目に血中LH,FSH,testosterone,5α-dehydrotestosterone(DHT)の測定を行い、各時点で5匹ずつ屠殺し、前立腺、精のう、精巣の重量と組織学的変化をみた。その結果は、LH-RHアナログおよび抗アンドロゲン剤併用群と、LH-RHアナログ単独投与群の間で、血中ホルモンデータ、および組織重量に有意の差は認められなかった。また組織学的にも特徴的な所見は得られなかった。この結果より、flare up現象の抑制にはLH-RHアナログ投与後に抗アンドロゲン剤を投与するのではなく、抗アンドロゲン剤を先行投与する必要があると思われた。また抗アンドロゲン剤として使用したTZP4238の薬理学的活性に問題があったことも考えられ、新たな実験計画を作成し、それを遂行中である。すなわち、抗アンドロゲン剤として既に臨床応用されているステロイド型のChlormadinone acetate(CMA)と非ステロイド型のFlutemide(FL)を使用する。そして抗アンドロゲン剤はLH-RHアナログ剤投与日の1週間前より先行して投与開始する。LH-RHアナログ剤投与後第3、14日目に各群10匹を屠殺し、血中LH,FSH,testosteroneを測定し、各標的臓器重量を測定し、組織学的所見を観察する。なお、Dunning R3327株を用いた移植腫瘍による実験計画は、同株が入手できず断念した。
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