研究概要 |
ヒト精巣腫瘍における胎盤性アルカリフォスファターゼ(PLAP)レベルはセミノーマ3.76±2.98IU/g(n=38)、非セミノーマ0.44±0.62IU/g(n=21)であった。一方ヌードマウス移植腫瘍内PLAP3.63±2.17IU/g(n=19),同LAP(肝性アルカリフォスファターゼ)0.24±0.15IU/g(n=19)であり、それぞれセミノーマと非セミノーマにおけるPLAPの組織内濃度に近似していることが示された。そこでI-125標識抗PLAPあるいは抗LAPモノクローナル抗体を用いて、転移性精巣腫瘍の局在診断の可能性を探る目的にそれぞれの抗体のマウス移植腫瘍に対する腫瘍集積性について検討を加えた。腫瘍組織における抗PLAP抗体の%ID/g tissueは投与後216時間まで約8%を維持したのに対し、抗LAP抗体の場合は時間とともに他の臓器と同様に減少していった。抗LAP抗体では腫瘍/血液が1を越えなかったのに対し、抗PLAP抗体においては投与48時間後より1を越え、216時間後には3.75に達した。体外イメージングにおいては抗PLAP抗体投与後48時間より明らかな腫瘍組織への集積を認め216時間後にはほぼ腫瘍組織のみが描出された。つぎにヒトセミノーマ細胞の継代培養の試みとして血清PLAP陽性を示したセミノーマ症例のリンパ節転移巣をSCIDマウス背部に移植したところ約80%の生着率が得られた。約1カ月で1gまで増殖し2-3gまでは壊死をきたすことなく均一な腫瘍組織を得ることが可能であった。移植セミノーマ組織内PLAP,LAP濃度はそれぞれ3.74IU/g,19.2IU/gであり5代継代後においても同等の組織内濃度を維持していることが示された。I-125標識抗PLAP,抗LAPモノクローナル抗体を用いて腫瘍集積性を検討すると腫瘍組織における%ID/g tissueは抗PLAP抗体の場合は投与後216時間まで1-2%を推移するに留まった.また抗LAP抗体においては投与後24時間の6.9%より漸減し216時間後は3.5%であった.腫瘍/血液は両者とも1を越えることはなかった.体外イメージングにおいては抗LAP抗体投与後72-168時間においては腫瘍の存在が確認されたが、抗PLAP抗体による腫瘍イメージは得られなかった。マウス血清アルカリフォスファターゼ(PLAP,LAP)レベルは移殖腫瘍重量と正の相関をもって上昇し、病期の進行に伴って血清レベルの上昇をみる臨床データに相応していた。またSCIDにおける血清レベルはPLAP,LAPともヌードマウスの約5-7倍の活性を示し、循環抗原量に差があることが示された。
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