移行上皮癌に特異的に強く反応するモノクローナル抗体(EH14)は、移行上皮癌患者の血清および尿中に反応抗原が正常人血清、尿に比較して多く含まれていることを見出している。このことは、EH14の認識する抗原が移行上皮癌の新しい血清や尿中の腫瘍マーカーとなる可能性を示すものである。今年度、EH14抗原を精製するために、まずEH14抗体産生hybridomaをマウスの腹腔内で増殖させ腹水の採取を試みたが、腹水を得ることが出来なかった。そこでEH14培養上清を約2L集め、硫安カット法にて粗製精したIgMを免疫吸着カラムを用いて精製した。得られたIgMを用いて、免疫吸着カラムを作製し、現在、EH14の認識抗原の精製を鋭意行なっている。免疫吸着カラムによる抗原の精製がまだ完全には成功していないが、まもなく成功する目処がついている。同時に平行して、生化学的な手段を用いて抗原の精製も試みている。すなわち、イオン交換樹脂(DE52、hydroxy appatite等)ゲル濾過等により抗原の精製を行いて、抗原の精製ないしは部分精製を行っている。来年度中にはいずれかの方法で抗原の精製、アミノ酸配列を部分的に決定できる予定である。抗原の精製が完了すれば、家兎に免疫しポリクローナル抗体を作製する。さらに、ラジオイムノアッセイによる抗原濃度の測定方法を確立し患者血清中や尿中のEH14認識抗原の正確な定量を試み、移行上皮癌のマーカーとしての有用性を検討する予定である。 また、EH14認識抗原のアミノ酸配列を決定し、適当なDNAプローベを選択し用いることで、このEH14関連遺伝子の遺伝子変異の検出を行い移行上皮癌の悪性度や予後と比較する。
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