前年度は主として動物実験を行い、メチルプレドニゾロン(MP)がシスプラチン腎障害を軽減する作用を有することを確認し、MPの至適投与量や投与時期について検討を行った。この成果を基に平成6年度はMPによるシスプラチン腎障害予防の機序を解明する目的で以下のような実験を行った。 1.ラットにおけるシスプラチンの薬理動態におよぼすMPの影響の検討 SDラットにMPを皮下注、4時間後にシスプラチンを静注した。4時間後および24時間後の血漿、尿、腎組織中のPt濃度を測定した。MP群の血漿、腎Pt濃度は対照群と比べて有意に低く、逆に尿中Pt排泄は有意に多かった。MPはシスプラチンの尿中排泄を促進した。 2.尿細管上皮細胞の基底膜輸送能や糖新生能に対するシスプラチンの抑制作用に与えるMPの影響の検討 SDラットにMPを皮下注し、4時間後に屠殺して腎組織スライスを作製した。これをシスプラチン溶液中で短時間培養し、パラアミノ馬尿酸(PAH)輸送能と糖新生能を定量した。シスプラチンによりPAH輸送能は有意に抑制されたが、MP前処置はこの抑制に影響を与えなかった。これに対してシスプラチンによる糖新生の抑制はMP前処置により軽減された。MPはシスプラチンによる尿細管上皮細胞のエネルギー代謝障害を抑制した。 MPによるシスプラチン腎障害予防の機序として、MPによるシスプラチンの尿中排泄の促進、MPのシスプラチンによる尿細管上皮細胞のエネルギー代謝障害の抑制などが考えられた。
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