平成6年度においては、性行動調節に対するdopamineおよびserotoninニューロンの相互作用に関し検討を進めた。方法は前年度までと同様に、microdialysis法を用いた。薬剤投与によりdopamineおよびserotoninを同程度上昇させた場合、雄ラットの性行動は抑制された。これらの所見より、脳内serotonin濃度の上昇による性行動の抑制作用がより有意である可能性が示唆された。また性中枢である内側視索前野において局所的にserotonin濃度の上昇を導いても、性行動の抑制は認められなかった。脳内serotoninニューロンは性中枢においては性行動に対する抑制作用を有していない可能性があるものと思われた。 また本年度の成果として高齢ラットに対してテストステロン補充を行い性行動の回復を検討した。24カ月齢雄ラットに対し正常レベルのテストステロン補充では性行動の回復を認めなかったものの、さらに多量のテストステロン補充を行うことにより性行動の回復が認められた。さらにテストステロンが性行動を回復させる機序としてdopamineニューロンとの関連を中心に検討を進めている。 本年度の成果は、脳内神経伝達物質の性行動調節機構の一部を明らかにしたものと思われ、脳機能改善薬による性機能改善の可能性を示すものと思われる。また高齢ラットがhormone replacement therpay (HRT)により性行動の回復を認めた事実より、ヒト高齢者においてもHRTが性機能の改善に有用である可能性があると思われる。さらにHRTにより性機能のみならず他の生理機能に対する影響についても検討を進める予定である。 またこれらの基礎資料をもとに、臨床応用に関しても検討中である。
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