今回の研究において我々はdopamine(DA)ニューロンを中心に性行動への促進作用を証明してきた。性行動時において雄ラットの内側視索前野におけるDAの上昇を明らかにした。Acetylcholine(Ach)は、内側視索前野においてはマウント行動を示すラットでは上昇が認められ、さらに大脳皮質においてはマウント行動を示さないものの雌ラットの性器の臭いを嗅ぐなどの雌指向性行動を示したものでは、Achの上昇が認められた。また同部位においてDAの上昇を生じさせると雄ラットの性行動は有意に亢進した。これらの結果からDA及びAch系ニューロンは雄ラットの性行動を促進させることがより明らかにすることができた。 次にDAニューロン機能を低下させる環境因子としてストレスに関する検討を行った。長期の心理的ストレスにより、雄ラットの性行動は低下を示し、DA伝達機能の低下を明らかにし、さらに脳機能改善薬の投与が性機能低下を予防し得ることを実験的に証明し得た。これらの結果は、今後の性機能障害に対する治療の一つとして中枢機能のからのアプローチも可能になりうることを示唆するものと思われる。 また今回の研究において、我々は男性におけるホルモン補充療法の可能性を示せたと考えている。24ヵ月齢の高齢雄ラットに対しtestosteroneの補充を行う事により性行動は回復し、さらに12ヵ月齢の雄ラットに12ヵ月間の長期のホルモン補充を行うと若年ラットと同等のマウント回数に6週間で回復しその後も性行動のレベルは維持された。さらに内側視索前野男性におけるDAニューロンの反応性も回復が認められていた。 今回の研究では、雄型の性機能調節に関与するDAニューロン機能とその機能維持に関連する要因を検討できたと考えている。また脳機能改善薬やホルモン補充の臨床応用の可能性も示せたものと考えている。
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