研究概要 |
幼若ラットのセルトリ細胞培養液(SCCM)中に,成熟マウスのライディッヒ細胞を刺激してテストステロン(T)分泌を促進する因子があることを確認し、その生化学的性質の一部を明らかにしてきた。 セルトリ細胞は3週齢の幼若ラット精巣よりトリプシンとコラゲナーゼ処理により得、無血清培地で培養した。分子量1万をカットオフ値とする限外濾過にてSCCMを15倍に濃縮した。ライディッヒ細胞は10週齢の成熟マウス精巣より酵素によらず分離した。濃縮したSCCMをライディッヒ細胞浮遊液(最終濃度10^6 cells/ml)に加えたところ、37°C3時間のインクベーションにてSCCMの濃度依存性にTの基礎分泌は促進された。 このT分泌亢進因子のライディッヒ細胞での作用機序を検討した。インクベーション後、上清中のcAMPをRIAにて測定した。その結果、cAMPもTと同様に、添加したSCCAの濃度依存性に上昇した。 次にこの因子がライディッヒ細胞でのpregnenoloneからTにいたる一連の酵素活性に変化を来たすか否かにつき検討した。5×10^7個のライディッヒ細胞をSCCMあるいはLHと34°C3時間インクベーションし、ライディッヒ細胞を分離した。これをホモジナイズして酵素液とした。^<14>C-pregnenolone,^<14>C-progesterone,^<14>C-17alpha-hydroxyprogesterone,^<14>C-androstenedioneを基質としてそれぞれ3beta-HSD,17alpha-hydroxylase,C17-20lyase,17beta-HSDの酵素活性を測定した。コントロールと比較し、SCCM処理にてはLH処理と同様にこれら酵素活性に変化を認めなかった。すなわちSCCMの作用点はLHと同様にテストステロン生合成の初期段階、すなわちcholesterolpregnenoloneの過程に作用している可能性が考えられた。LHの過剰刺激下ではT分泌がそれ以上に亢進しないこともこれを裏付けるデータと思われる。
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