本研究の目的は、IL-2産生腎細胞癌体を用いて効率よく自己腫瘍特異的T細胞株を樹立させ、自己腫瘍特異的認識機構の実体にT細胞側から迫ることにある。pBCMGS-Neo/IL-2およびpBCMGS-Neoをリポフェクチンによって、それぞれ別々にマウス由来腎細胞癌株(Renca)にトランスフェクトし、G418によって、Neo抵抗性細胞を選択した。得られた細胞株の培養上清中IL-2活性をバイオアッセイにて測定し、Renca-pBCMGS-Neo/IL-2がIL-2を産生する事を確認した。さらに、IL-2産生細胞株のlimiting dilutionにていくつかのクローンをとり、IL-2産生能の異なるクローンを得た。In vitroでの増殖速度にクローン間で著差は認めなかったが、マウス皮下での造腫瘍性は、クローンによって異なっていた。これは、何らかの免疫反応が宿主に生じていることを示唆する所見であった。IL-2産生腫瘍細胞株を皮下移植したマウスから得られた脾細胞の細胞障害パターン(^<51>Cr放出試験)は、コントロールに比べ、細胞障害活性は有意に高かったが、明らかな特異的細胞障害活性はみられなかった。IL-2産生腫瘍細胞株の皮下腫瘍から腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を採取した。IL-2非産生腫瘍細胞株のTILsに比べ、IL-2産生腫瘍細胞株の腫瘍からは、より多くの細胞数を得ることができた。IL-2産生腫瘍から得られたTILsの細胞障害活性は、IL-2非産生腫瘍から得られたコントロール細胞に比べ、細胞障害活性は有意に高かったが、明らかな特異性はみられなかった。以上より、IL-2産生腫瘍細胞は、局所腫瘍内にリンパ球の浸潤を誘導し、明らかな特異的免疫は誘導できなかったが、幅広いターゲットスペクトラムを有し、細胞障害活性の高い、いわゆるLAKを誘導することが可能であることが明らかとなった。
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