研究概要 |
私たちは、androgenは中枢のみならず抹消レベルにも作用し,勃起機能に関与しているのではないかと考え、本研究を行った。陰茎海綿体におけるα_1-adrenoceptorの存在を確認するために、ウサギ陰茎を用い,autoradiographyを行った。その結果、α_1-adrenoceptorが陰茎および尿道海綿体内に存在することが明らかになった。Androgenの陰茎海綿体α_1-adrenoceptorに対する影響を検討するために、収縮弛緩実験を行った。ウサギを対照群(Control)、testoster one propionate投与群(TP)、去勢群(Cast)、去勢+testoster one propionate補充群(Cast+TP)の4群に分け、これら各群の茎海綿体切片をorgan bath内に懸垂し、薬剤を添加し、その際の張力の変化を等尺性に測定した。norepinephrine添加によるCast群の収縮反応はControl群に比較し有意に弱かったが、逆にTP群の反応は有意に強いものとなった。一方、Cast+TP群の反応はControl群と有意差のないものとなり、去勢により減弱した収縮反応はtestoster oneの補充により回復した。α_1選択性α-agonistであるphenylephrineに対する各群の陰茎海綿体切片の反応も同様の結果となった。次いで、Control群、Cast群、Cast+TP群の3群のウサギ陰茎海綿体より調整した膜標本を用いて、〔^3H〕pr azosinの結合飽和実験を行った。Cast群の最大結合数すなわちα_1-adrenoceptorの総量BmaxはControl群およびCast+TP群よりも有意に低値となり、α_1-adrenoceptorの量が去勢により減少し、testoster oneの補充により増加することが判明した。このことから、血中testoster one濃度の変化による陰茎海綿体の収縮反応の増減の原因のひとつには受容体の量的変化もあるであろうことが示唆された。以上より、androgenが勃起機能をはじめとする性機能と密接に関連していることは明らかであるが、従来いわれてきたようにその作用部位は中枢だけではなく、抹消にも作用し、勃起機能に影響を及ぼしていることが判明した。
|