研究概要 |
1.逆流性腎症の臨床病理学的検討 平成6年度までに腎組織学的所見と臨床所見との対比検討を行ってきた(95例)。Smellieの瘢痕分類で左右の組み合わせa/c、その時点での糸球体肥大+2標準扁差(S.D.)が不可逆性の腎障害への分岐点であることが再確認されたが、更に今年度は臨床経過面からの観察も加えた。その結果、(1)尿蛋白100mg/日分岐点にある、(2)瘢痕bをもつ腎は5年の経過でc(萎縮腎)へ変化する、(3)標準体表面積補正による血清クレアチニンが腎機能経過をよく反映する、(4)拡張期高血圧は腎機能が不可逆性過程に入った段階で出現し(尿蛋白平均300mg/日)、PRAの上昇を伴う(JG装置の肥大をみることもある)、(5)糸球体の肥大進行と腎機能低下、尿蛋白増加が相関することが判明した。 2.逆流性腎症におけるDopamine負荷による腎予備能の検討 平成6年までに22例に施行した。結果は(1)GFRは瘢痕a/bで1/2に低下する。一方、Dopamine負荷によるGFRの増加(予備能)はa/cで最高に達し、以後瘢痕の増加に伴ってGFR,予備能ともに低下する。(2)RPFは瘢痕b/bまでは正常域にあり、Dopamine負荷によるRPFの増加もb/bで最高に達する。しかし、瘢痕増加に伴ってRPF急速に低下し、Dopamine負荷でも変化は少ない。(3)糸球体濾過率(F.F.)瘢痕増加に伴って徐々に増加する。これらを勘案すると、逆流性腎症における不可逆性腎症への分岐点は、これまでに想定した基準よりさらに早期(遅くとも瘢痕a/bの時期)に設定すべきと考えている。
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