研究概要 |
本年度は子宮体癌における癌遺伝子異常(p53、K-ras)につき、日本人症例を対象に検索し、その臨床予後および臨床病理学的因子との関連を検討した。方法は子宮体癌221例の10%ホルマリン固定標本を用いた、標本薄切後、癌組織のDNAを抽出し、PCR-RFLP(Rectriction Fragment Length Polymorphism)法にてK-ras遺伝子codon12領域の点突然変異を検索した。またp53蛋白の過剰発現の検索は同一症例の隣接切片を用い、免疫組織学的手法で行った。その結果、K-ras変異は221例中41例(18.6%)にみられるも統計学的、予後不良因子とは認められなかった。しかし60歳異常の症例71例中ではK-ras変異検出例14例中7例(50%)に死亡再発例がみられたのに対し、非検出例では57例中10例(17.5%)と有意な差が認められた(p=0.011)p53蛋白過剰発現は47例(21.3%)にみられ、陽性例は陰性例に比し有意に予後不良であり、多変種解析でも独立した予後不良因子であった(p=0.004)。特に臨床進行期I期II期の症例ではdisease free例156例中14.7%に過剰発現を認めたのに対し、死亡再発例22例では50%の発現率であった(p<0.0001)、またK-ras、p53の双方に異常がみられたのは5例のみで、うち2例が死亡例であった。異常をまとめると1)60歳以上の高齢者の子宮体癌ではK-ras変異は重要な予後不良因子として関与することが示唆された。2)p53蛋白過剰発現は子宮体癌の生物学的悪性度を反映する独立した予後不良因子であり、特に早期癌において予後を推測するマーカーとして有用すると考えられた。3)子宮体癌の進展・増悪過程でK-ras,p53の変異は、それぞれ独立した因子として関与することが示唆された。
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