研究結果-1 前年度にひきつづき妊娠中毒症妊婦での産生量を測定し正常妊婦と比較検討した。方法は正常妊婦と同様に、Calcium ionophoreを添加して10分間インキュベーションしその上清中のLTB_4およびω酸化代謝産物(以下ω-LTB_4)をHPLCにて測定した。その合計をLTB_4の総産生量(以下総LTB_4)とした。 (1)妊娠中毒症妊婦においてはLTB_4および総LTB_4(LTB_4+ω-LTB_4)の産生量は全妊娠期間においてあきらかな低下を示さず非妊婦と同レベルにあり、正常妊婦では妊娠経過とともに明らかに低下したのに比べて、際だった違いを示した。(2)しかもこの総LTB_4産生量と生下時児体重との間には有意な負の相関関係がみとめられた。 この結果、正常妊娠において抑制されているLTB_4の分泌が妊娠中毒症では破綻しており、この現象が妊娠中毒症の病態とくに血管内皮障害に関与していることが推察される。 研究結果-2 妊娠好中球の機能の指標として今年度はIL1βとエラスターゼの分泌量を検討しようとした。 (1)好中球の分離精製はLTB_4の産生の研究と同様とした。(2)好中球刺激物質として(3)健常男性の好中球および単球を材料としてIL1βおよび好中球エラスターゼ産生量測定のためのインキュベーション条件(LPSおよびPMN添加濃度、インキュベーション時間、温度)を設定した。(4)また好中球エラスターゼ測定キットは試料が血液(血液中のアンチトリプシンの存在を前提としている)であるため、アンチトリプシンの添加濃度を検討した。しかし、最近になってこのようなアンチトリプシンの添加を必要としない測定キットが開発されたため両測定法の信頼性と採用の妥当性について検討中である。
|