抗MMPs抗体(主にMMP-1)を用いたELISA法によって、母体血清中MMP-1の濃度を測定した。その結果妊娠初期および中期には、健常非妊婦と同レベルの血中濃度であったが、妊娠後期、特に妊娠36週以降有意に上昇する事が認められた。また、陣発によって子宮頸管の開大するとき、および産褥2時間以内はMMP-1の血中濃度の急激な上昇が認められた。以前の研究では、MMP-1のinhobotorであるTIMPの血中濃度が妊娠経過を通じて変化しなかったこと、陣発による頸管開大、産褥において上昇する傾向を認めるが推計学的に有意でなかったことを考えあわせると、妊娠におけるMMP-1の意義は、頸管熟化に関与していることが推測された。また、前期破水症例における血中MMP-1濃度は、TIMPと同じく、正常妊婦血清のM±SDの範囲にあり、前期破水の指標となりえないことが判明した。 次に、羊水中のMMP-1を測定した。その結果、羊水中濃度は血清中濃度とほぼ同じ濃度を示した。以前の結果より羊水中ではTIMP優位であることが判明した。このことは羊水中TIMPが卵膜の破綻防止に働いていることを窺わせた。 現在、卵膜(羊膜・絨毛膜)組織中MMP濃度の測定を行い、現在まで測定しえたそれらTIMP濃度との関係を調べており、また、抗MMPs抗体、抗TIMP抗体によるヒト卵膜組織における免疫組織、ヒトMMPsプローベ、ヒトTIMPプローベによるin situハイブリダイゼーションをおこない、卵膜組織(破水例および非破水例)におけるそれらの局在の検討を行なっている。
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