研究概要 |
MMPSのインヒビターであるTIMPの測定において、妊婦血清TIMP動態を明らかにした。次に、羊水中TIMP濃度が母・児の血清中TIMP濃度に比し、著しく高い値を示し、また卵膜中にも比較的高い濃度のTIMPが存在することを明らかにした。また、このTIMPが卵膜を構成する組織のうち、羊膜上皮細胞と羊膜線維芽細胞、繊毛膜細胞、脱落膜の一部に局在することを証明した。つぎに、MMP-1の測定において、その妊婦血清中の変化は、妊娠末期にその濃度の上昇を認めた。また、頸管熱化の開始にともなって上昇する傾向が認められた。また、羊水中濃度の検討ではTIMPと異なり、血清中濃度とほとんど同じ濃度を示した。免疫組織化学による検討では、ヒト卵膜においてTIMPが染色された細胞にMMP-1の局在が認められた。また、好中球の浸潤部位周囲に高濃度に染色された。これらのことより、炎症により、MMP_sとTIMPの不均衡が生じその結果卵膜の破綻が起こることが推測された。そこで、ヒト羊膜および繊毛膜細胞の培養を行い、各種サイトカイン(IL-1,IL-2,IL-6,TNFα)を添加し、MMP-1およびそのインヒビター(TIMP)動態を検討した。結果、繊毛膜細胞においてIL-1,IL-2,IL-6の添加によりMMP-1およびTIMPの産生量が増加したが、TNFαにおいてはMMP-1は濃度依存性に増加するが、TIMP産生量は変化しなかった。羊膜細胞においてはサイトカイン(IL-1,IL-2,IL-6,TNFα)の添加により、TIMP産生量の増加を認めたが、MMP-1の産生を検出しえなかった。
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