研究概要 |
子宮頸癌における予後因子として骨盤内リンパ節への転移の有無が重要であり、micrometastasisを把握する方法を新たに確立する事は、臨床上極めて意義深い。また、外陰癌(扁平上皮癌)においては、原発巣の拡がりよりも鼡径リンパ節への転移の有無が予後因子としてさらに重要である。Human Papilloma Virus(HPV)は、PCR法を用いた場合、子宮頸癌組織の80%以上で、外陰癌組織では50%程度に検出される。そこで我々は、この外因性oncogeneと呼べるHPV DNAに着目し、悪性化に関与しているHPV16,18,33型DNAを検出可能なnested-PCRの系を新たに確立した。これを用いて手術治療を行った子宮頸癌および外陰癌症例のうちpTNM分類でNO症例のパラフィン包埋組織を分析し臨床経過との比較を行うことで両癌におけるHPVのリンパ節転移マーカーとしての有用性を検討する。検討対象は、1970〜1991年の外陰癌手術症例8例であり、臨床期分類0/IIIであった。原発巣のHPV検索において、HPV16,18,33型のうちどの型のHPVも検出できなかった。この理由として、ホルマリン固定による検体DNAのdamageが考えられるが、他方、8例の年齢分布は58〜80歳(平均年齢:63歳)と高齢であり、Parkらの報告によるように、60歳以上の外陰癌の発症に関してHPVの関与は否定的であることが示唆された。上述したように外陰癌の場合病態のHeterogeneityが発症年齢と深く関わっていることが示唆されたため、当初予定していた対象症例以外に拡大することが必要であると考えられる。子宮頸癌症例に対しても今後検索を進める予定である。また、子宮頸癌発症においてある種のHLAとの関連が報告されている。若年症例での検討も追加する予定である。
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