研究概要 |
本研究はX染色体上のPGK遺伝子に注目しその不活化と多型性に関与する2種類のエンドヌクレアーゼ(HpaIIとBstXI)を組み合わせ、腫瘍の凍結切片より抽出したDNAをPCR法により増幅する新しい手法を開発してヒト固型腫瘍のクロナリティ解析を行うことを目的とする。対象として婦人科腫瘍76例(子宮頸癌16例、子宮内膜癌21例、卵巣癌12例、卵管癌3例、子宮筋腫24例)を用い、まずPGK遺伝子のうちBstXIのヘテロ接合体を示す症例のスクリーニングを行ったところ34例(45%)にヘテロ接合型が認められた。これら症例について腫瘍DNAの分析を行った。正常組織DNAのPCR産物の泳動パターンはHpaIIの前処理の有無にかかわらず530bpと433bpの2本のフラグメントが検出された。一方腫瘍組織より抽出したDNAではHpaII前処理を行わない場合は2本のバンドが検出されたが前処理を行うと530bp(19例)もしくは433bp(6例)の1本のバンドしか認めなかった。次に同一腫瘍組織内の異なった個所より検体を採取し解析を加えたがすべて同一パターンの1本のバンドが検出された。さらに大網,腹膜,リンパ節への転移巣と原発巣とを比較した結果すべて原発巣と同一パターンのバンドを呈した。この結果、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、卵管癌はすべて単一クローン由来と考えられた。子宮筋腫9例より摘出した22個の筋腫核を用いた検討では個々の筋腫核は特徴的な単一タイプの遺伝子不活化パターンを呈した。このことにより子宮筋腫は単一クローン由来であるが、同一子宮内に独立して発生するものと考えられた。
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