卵巣・卵管機能には、従来からのhormonalな調節機構の他に、神経調節機構が存在し、互いに連関作動していることを明らかとするため、免疫組織化学的方法により、光顕・電顕にて検討し、GABAは(1)non-neuronalにラット卵管粘膜上皮にのみ局在する。(2)その強さは、膨大部が最強で、峽部、采部、子宮への移行部の順に減弱する。(3)non-ciliated cell 即ちsecretory cellの細胞質に局在する。(4)卵巣摘除及びホルモン補充実験から、ホルモンを含む卵巣機能の影響下にあることを明らかにした。また、カテコラミンではその合成酵素であるTH及びDBH抗体を用いてラット卵巣での陽性神経線維の分布と終末構造を観察し、(1)卵巣内神経性アミンは間質の自由終末からの遊離拡散により、液性物質様にステロイド分泌・代謝組織へ情報を伝達すると共に、(2)他の神経成分(ペプタイド)との関連を明らかにした。 一方、8細胞期以降の胚や胎児の主要なエネルギー源であるグルコースの供給機構を明らかとするため、促通拡散型の糖輸送体であるグルコーストランスポーター1(GLUT1)の卵管や胎盤での発現とその局在をImmunoblot法、Nothern blot法および、免疫組織化学的方法により検討し、GLUT1がラット卵管に発現し、膨大部と峽部のnon-ciliated cell即ち、secretory cellの管腔側microvilliに局在することを明らかにし、GLUT1を介するグルコース供給機構が、8細胞期以降のグルコース要求性の高い部位に一致して、発達していることを示唆した。またヒト胎盤では、絨毛にGLUT1が局在し、その発現量は妊娠時期の進行にともない増加すること。さらに、絨毛細胞では、syncytiotrophoblastのapical側がbasal側より強く、cytotrophoblastには存在しないことを電顕レベルでも明らかにし、GLUT1が胎児発育に重要であることを示唆した。
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