研究概要 |
I.HPV DNAの導入によって得られた不死化ヒト子宮頸部上皮細胞株(HEC-16)の継代を続け、現在60代になるが、明らかな形態学的変化はみられず、いまだ造腫瘍能の獲得には到っていない。 II.Co-factorの検討:Iと同じ不死化細胞株を用いて、女性ホルモン、特にestrogenを培地中に加え、2ヶ月間連続して作用し続けたが、明らかな形態学的変化は見られず、増殖能の変化も見られなかった。 III.HEC-16からDNAおよびRNAを抽出した後、この中にc-myc遺伝子の増幅の有無、および過剰発現の有無を検索したところ、DNAレベルでもまたRNAレベルでも変化は見られなかった。 IV.初代培養ハムスター胎児細胞にHPV-6,11,16,および18DNAを導入することにより、すべてから不死化細胞が得られた。これらの細胞株の継代を続けていくことにより、HPV-16およびHPV-18 DNAの導入によって不死化した細胞株のみが造腫瘍能を獲得するのが観察された。また継代を重ねれば重ねるほど腫瘍形成までの時間が短縮するのが観察された。 本年度は研究予定の約50%に着手できたにすぎない。これは、予想以上に、このヒト由来の不死化細胞株が外的刺激に対して安定で、容易に増殖能の変化をきたさないことによる。残りの実験計画は次年度に持ち越すことになる。
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