I.18型ヒト乳頭腫ウイルス(HPV18)の導入によって、子宮頚管腺由来の上皮細胞の不死化に成功した(HEN-18). II.HPV18は子宮頚部腺癌において高率に検出されるが、このウイルスが腺癌の発生に関与しているかどうかをみるため、HEN-18細胞の性状の検索を行った.これは、同じくHPV18の導入によって得られた子宮頚部扁平上皮由来の不死化細胞(HEC-18)との比較によって行った.その結果、頚管細胞由来の不死化細胞の方がin vovo implantation systemではより高度の病変に対応すること、またこの細胞のサイトケラチン発現パターンが子宮頚部腺癌に一致することから、この細胞が頚部腺癌の前癌モデルとなりうることが示された. III.HPV感染による子宮頚部癌化において、このウイルスDNAが細胞DNAへ組み込まれることが重要であるといわれている.そこで、子宮頚部上皮細胞にHPV18DNAを導入し、細胞が不死化細胞へと移行していく過程で、ウイルスDNAの存在様式がどのように変化するかを検索したところ、crisis前には100コピー以上のHPV DNAがすべてepisomeに存在したのに対し、crisis後は数コピーのHPV DNAがすべて細胞DNAに組み込まれていることが明らかになった. IV.上記のcrisis前後の細胞間にE6-E7およびE2/E4のRNA発現パターンに差異がみられた. V.III IVの結果から、ウイルスDNAの細胞への組み込みが、発癌までは不十分としても、少なくとも細胞の不死化に重要であることが示唆された. VI.子宮頚部扁平上皮由来の新たな不死化細胞株(HEC-18-1)にシガレットの煙の濃縮液を反復投与したところ、造腫瘍能を獲得した(HEC-18-1C).この細胞が形成した腫瘍は浸潤性の扁平上皮癌であった.
|