研究概要 |
I.16型および18型ヒト乳頭腫ウイルス(HPV18)の導入によって、子宮頚管腺由来および子宮頚部扁平上皮由来の上皮細胞の不死化に成功した(HEN-16,HEC-16,HEN-18,HEC-18-1)。 II.HPV18は子宮頚部腺癌において高率に検出されるが、このウイルスが腺癌の発生に関与しているかどうかをみるため、HEN-18細胞の性状の検索を行った。これは、同じくHPV18の導入によって得られた子宮頚部扁平上皮由来のHEC-18との比較によって行った。その結果、頚管細胞由来の不死化細胞の方がin vivo implantation systemではより高度の病変に対応すること、またサイトケラチン発現パターン子宮頚部腺癌に一致することから、この細胞が頚部腺癌の前癌モデルとなりうることが示された。 III.HPV感染による子宮頚部癌化において、ウイルスDNAが細胞DNAへ組み込まれることが重要であるといわれている。そこで、子宮頚部上皮細胞にHPV18DNAを導入し、細胞が不死化細胞へと移行していく過程で、ウイルスDNAの存在様式を検索したところ、crisis前には100コピー以上のHPV DNAがすべてepisomeに存在したのに対し、crisis後は数コピーのHPV DNAがすべて細胞DNAに組み込まれていることが明らかになった。 IV.上記crisis前後の細胞間にE6-E7およびE2/E4のRNA発現パターンに差異がみられた。 V.III IVの結果から、ウイルスDNAの細胞への組み込みが、発癌までは不十分としても、少なくとも細胞の不死化に重要であることが示唆された。 VI.HEC-18-1に、シガレットの煙の濃縮液を反復投与することにより、悪性化することが観察され、シガレットの発癌性が証明された。形成された腫瘍は扁平上皮癌であった。
|