研究概要 |
平成6年度までの研究において子宮筋腫に対するgonadotropin releasing horm one agonist(GnRHa)の直接効果について証明することができなかった.そこで子宮筋腫培養細胞に対するGnRHaの直接効果の有無を再検討するため,培養条件を変え検討した.手術によって得られた子宮筋腫および正常子宮筋組織を細切し,コラゲナーゼを含むハンクス液中で12時間消化した.白金メッシュにて未消化物を除去し,細胞浮遊液を遠心し,上清を除去後,10%牛胎児血清を含むWaymouth培養液に細胞を再浮遊させ培養に供した. (1)GnRHaの細胞増殖能への影響について 35mmシャーレで1x10^5個の筋腫細胞および正常子宮筋細胞を各種濃度のGnRHaを添加した培養液で培養し,経日的に2週間,細胞数および蛋白量を測定した.なお培養液はGnRHaの力価の低下を考慮し,1日毎に交換した.細胞数および蛋白量は,GnRHaのどの濃度においてもGnRHaを添加しない群と比べ有意な差は認めなかった.したがって,子宮筋腫および正常子宮筋の培養細胞の増殖能に対してGnRHaの直接効果はないものと推察された. (2)GnRHaの細胞縮小効果または細胞毒性の有無に関する検討 35mmシャーレで筋腫細胞および正常子宮筋細胞を培養し,約1週間後confluentになったものに各種濃度のGnRHaを添加し,経日的に2週間,細胞数および蛋白量を測定した.細胞数,1シャーレあたりの蛋白量および蛋白量を細胞数で除した1細胞あたりの蛋白量は,GnRHa無添加群と比べて全く有意差は認めなかった.したがって,GnRHaの直接的な細胞縮小効果または細胞毒性は無いものと考えられた. 以上の検討より、GnRHaの子宮筋腫細胞への直接効果の存在は証明することができなかった.この結果より子宮筋腫のGnRHaによる縮小効果は,GnRHaの筋腫細胞への直接作用ではなく,estrogen低下などによる間接的作用によるものと推察された.
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