研究概要 |
HTLV-I seropositiveの妊婦が娩出した胎盤では臍帯血に比べ,明らかに高頻度でHTLV-Iの感染がみられることより,胎児・胎盤の感染防御作用に着目し,以下の実験を行った。 HTLV-I- seropositiveの妊婦14例より臍帯血10mlを採取し,得られたリンパ球にEpstein-Barr virus(EBV)を加え,transformしてえられた培養上清中の抗HTLV-I IgM抗体の有無をMT-2細胞(HTLV-I感染リンパ球)を標的としたImmunocytochemistryでスクリーニングし,positiveであった培養上清はさらにWestern blot法(Fujirebio社:プロブロットHTLV-I,エ-ザイ社:エイテストATL-WB)にてそれらIgM抗体の対応抗原を調べた。その結果; (1)臍帯血14例中7例で良好なEBV transformationが得られ,その7例中4例においてMT-2細胞と反応するヒトIgM抗体を含んだ培養上清がそれぞれ、2/24,6/15,9/24,21/24ウェル得られた。 (2)Western blot法にて,それらMT-2細胞に反応した培養上清のヒトIgM抗体の対応抗原を調べたところ,1例(4ウェル)でHTLV-Iのp-19蛋白に相当する部位にバンドが認められた。 以上のことより,胎児へのHTLV-I感染を胎児自身が防御している機序の存在が示唆された。 しかしながら,同様のことを4例のHTLV-I- seronegativeの妊婦の臍帯血で行ったところ,2例でHTLV-Iのp-19蛋白に相当する部位にバンドが認められた。従って,HTLV-I- seropositiveの臍帯血リンパ球をtransformして得られたHTLV-1 p-19蛋白に対する抗体は,HTLV-I感染に特異的なものではなく,HTLV-I感染の有無に関わらず,臍帯血リンパ球にはHTLV-I p-19蛋白と関連した抗原に反応するクローンが存在するということを示している可能性も示唆された。
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