研究概要 |
高血圧と関連があるとされているアンギオテンシノゲン遺伝子変異のうち,235番目のアミノ酸のメチオニン(M)からスレオニン(T)への変換につき,関連病院も含め121名の妊婦より全血2mlを採血、遺伝子DNAを抽出し,同部位のDNA増幅を行なって電気泳動で確認後,ドットブロット装置でナイロンメンブレンにアプライし,digoxigenin-ddUTPでラベルしたオリゴヌクレオチドプローブを使用して変異を検出した.これらの妊婦を正常妊婦とPIH,またPreeclampsia,特に初産婦のPreeclampsiaと分類して検討を行った.その結果を下表に示した.(A:235M,a:235T) これまでの検討によりAGT遺伝子の235番目の変異(メチオニンスからスレオニン)のPIHへの関与は示唆されてきたが,まだ症例数も少なく統計学的な検討は不十分かと思われる.今後も症例数を増やして検索を続け,さらに個々の症例につき,より詳細な既住歴や家族歴の聴取と経過観察を行い,特にどのような相関関係が存在するかを明確にする必要がある.問題点としては,正常妊婦における遺伝子変異そのものも,これまでに報告されている正常コーカサス人種における頻度と異なるため,人種間の差が生じていることも考慮しなくてはならないということである.しかし,この点については,さらに症例が追加されることによって問題は解消されるものと推測され,むしろ日本人におけるPIH発症の特徴も解明できる可能性がある.
|