研究概要 |
HLA-G遺伝子の発現部位および機能を明らかにするため、まず、抗HLA-Gモノクロナル抗体を用いた免疫組織学的方法により、人体各種組織および各胎生期の胎盤組織におけるHLA-Gの発現の有無について調べた。心、腎、肝、膵、脾、副腎、小腸、大腸、尿管等、25種の組織について調べたところ、いずれにおいてもHLA-Gの発現は認められなかった。immune privileged tissueとしては、HLA-Gのm-RNAが存在していると報告されている胎児の眼房組織については試料が1例しか入手されず、これにおいても発現を確認することは出来なかった。さらに、精子および精母細胞においても発現は認められなかった。 各胎生期における胎盤については,1st trimesterから3rd trimesterまですべての時期(35例)において、extravillous trophoblast にのみ,その発現が認められ、chorionic villous trophoblast には認められなかった。これらの結果は、HLA-Gは胎児組織が母体組織に侵入してゆく最前線の細胞にのみ発現しており、母体の免疫機構からの胎児の保護という、この蛋白質の推測される機能をつよく裏付けるものと考えられる。 HLA-Gの可溶性抗原に関する研究においては、この存在を認識する目的で、臍帯血清中に存在するかどうかをsandwich ELISA法により調べた、HLA-G蛋白を検出することができた。そしてつぎに、可溶性抗原産生の遺伝子レベルでのメカニズムを検討したところ、D.E.Geraghtyらとの共同研究において、この遺伝子の特異的なsplicingによることが明らかになった。即ち、第4intronがsplice outされずに残り、その中にある終止コドンのため、それ以後にある膜結合領域が蛋白合成されないことに起因していると考えられる。
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