研究概要 |
1、HLA-Gの局在性に関する免疫組織学的データからの本遺伝子の機能解明 抗HLA-Gモノクロナル抗体を用いた免疫組織学的法により、人体各種組織および各胎生期の胎盤組織におけるHLA-Gの発現の有無について調べた。内分泌系、消化管系、唾液腺系、呼吸器系、心血管系、泌尿器系、生殖器系、リンパ系、神経系および眼、皮膚等45種の組織について調べたところ、いずれにおいてもHLA-Gの発現は認められなかった。immune privileged tissueととされる眼、皮膚、精子等については、HLA-GのmRNAの存在が報告されているが、本抗体によっては検出されなかった。 各胎生期における胎盤については,1st trimesterから3rd trimesterまですべての時期(38例)において、cytotrophoblastic cell collumn,cytotrophoblastic shellおよびinvasive cytotrophoblastにのみ,その発現が認められ,chorionic villous cytotrophoblastおよびsyncytiotrophoblastには認められなかった。これらの結果は、HLA-Gは胎児組織が母体組織に侵入してゆく最前線の細胞にのみ発現しており、母体の免疫機構からの胎児の保護という、この蛋白質の推測される機能をつよく裏付けるものと考えられる。 2、HLA-Gの可溶性抗原に関する研究 可溶性抗原産生の遺伝子レベルでのメカニズムを明らかにした。すなわち、第4intronがsplice outされずに残り、その中にある終止コドンのため、それ以後にある膜結合領域が蛋白合成されないことに起因している。この遺伝子のcDNAをtransfectした細胞を作製し、可溶性抗原を産生させ、この抗原蛋白の精製を行った。さらに、これを用いて、可溶性抗原のみに反応するモノクロナル抗体の作製に成功した。現在、この抗体を用いて臍帯血、妊婦血、胎盤中の可溶性抗原の検出を行っており、胎盤には、膜結合性のみならず可溶性抗原我存在していることを明らかにした。
|