研究概要 |
細胞の増殖促進、抑制にかかわる遺伝子として近年多くの癌遺伝子、癌抑制遺伝子が見いだされ、これらは癌細胞の増殖のコントロールに重要な役割を担っている。これらの癌遺伝子は、いくつかの染色体のなかに組み込まれ癌細胞の増殖促進、あるいは抑制を制御しているが、ステロイドホルモン標的細胞である子宮内膜癌においてはその役割は明確ではない。申請者は、この点に注目し平成2、3、4年度一般研究C(萌芽的研究)「細胞同調下における細胞成長因子、癌遺伝子の発現機構に関する研究」においてEpidermalgrowth factor(EGF),Epidermalgrowth factor receptor(EGFR),Ha-ras,C-mycのモノクローナル抗体をもちいて細胞周期同調培養下におけるステロイドホルモン添加時の子宮内膜癌細胞中のgrowth factor、癌遺伝子蛋白変動について研究を行った。その結果、EGF,EGFRはprogesterone添加により増加し、thymidineあるいはsodium butylate添加によりRas癌遺伝子蛋白の増加が見られた。しかしながら、これら一連の研究成果からは、遺伝子そのものの変化についての検索は困難であったため本研究においては上記研究の結果をふまえステロイドホルモン、制癌剤添加時における子宮内膜癌細胞の遺伝子解析に焦点をあてて研究を行った。しかし、平成5年度の研究計画では、Estrogen receptor(ER)を持つ子宮内膜癌由来細胞株Ishikawa(IK)およびERを持たない子宮内膜癌由来培養細胞株HEC-1(HEC)をFlow cytometerを用いて染色体分析を行う予定であったがIK,HECともgrowthが遅いためFlow cytometerにて染色体分析を行うことは不可能であった。そのため分子生物学的手法によりIK,HECにおける癌遺伝子、癌抑制遺伝子の解析を行った。その結果、ERを有するIKでは癌抑制遺伝子p53の変異がみられたが、HECではp53癌抑制遺伝子変異が見られなかった。今後は、IK,HECにsuteroidhormoneとしてはEstradiol17・beta(E2),Progesterone(P)或はDanazol(D)を、抗癌剤としてはCDDP、Taxolを添加し染色体の変異と癌抑制遺伝子の変異をも観察することを計画している。
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