研究概要 |
今年度の研究により以下の点が明らかとなり今後の研究の方向性が示唆された。 ヒト妊娠脱落膜細胞培養系にインターロイキン1(IL-1)を添加すると、プロスタグランディン(PG)の産生は濃度依存的(0.01-1ng/mI)かつ時間依存的に促進された。また、これと同時に、免疫組織化学的に検出されるプロスタグランディンH2合成酵素(PGHS2)が増加し、IL-1によるPG産生の促進に律速段階酵素の誘導が関与する可能性が強く示唆された。また、この酵素の誘導およびPG産生の促進は、妊娠中に高い値をとるプロゲステロンを、in vitroで添加することにより阻害されることが明らかとなり、初期妊娠の維持機構や、分娩発来機構へのプロゲステロンの関与の可能性について新たな側面を示唆した。(日本受精着床学会雑誌10:251,1993) ヒト子宮内膜および脱落膜においてPG以外のもうひとつの重要なPGH2代謝産物である12hydroxyeicosatetraenoic acid(12HETE)の産生を検討したところ、増殖期子宮内膜より分泌期にその産生は増大し、妊娠成立後の脱落膜でその産生は抑制されることが明らかとなった。この変化は、この組織におけるPG産生の変化と極めて類似しており、着床機構における12HETEの意義について、今後一層検討していく必要のあることを示唆する。(Prostaglandin Leukotrien Essent.Fatty Acids 49:609,1993)
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